一口に紅茶と言っても、産地によってその特徴が様々です。
名前は聞いたことがあるけれど、特徴の違いはよく分かっていない場合も多いのではないでしょうか。
有名な紅茶の銘柄として挙げられるシーンの多いダージリン。
こちらの記事ではそんなダージリンについて紹介します。
世界三大銘茶の一つ、ダージリン
紅茶の世界には、世界三大銘茶と呼ばれる銘柄があります。
それぞれ産地に歴史があり、紅茶の品質が良く、特徴的な風味を持っています。
世界三大銘茶は、以下の3つの地域で生産された紅茶を指します。
・インド:ダージリン
・中国:キーモン
・スリランカ:ウバ
ただし、この呼び方は現在では日本だけで呼ばれている物であり、そこまで重要視されていないようです。
ダージリンの産地
ダージリンはインドの北東部に位置するダージリン地方で収穫されます。
ダージリン地方は紅茶の生産地としても有名ですが、実はインドで有名な避暑地の1つです。
東ヒマラヤ山のふもと、西ベンガル州の最北に位置しており、ネパールとブータンに挟まれた交易の町です。
町の中心部は標高2,300mの高地にあり、茶樹も標高2,200mの高地から標高300mの谷底までの急斜面に位置する茶園に植えられています。
そのため、日中の直射日光と夜間の低温による寒暖差で非常に激しい地域です。
その温度差による霧が1日に何度も発生し、その度にヒマラヤの冷たい風が霧を晴らします。
この風というのはインドの国境からネパールの東部にかけてそびえる標高8,586mのカンチェンジュンガ山から吹く風です。
エベレスト・K2に次いで世界第3位の標高を誇るこちらは観光スポットとしても有名で、例年多くの観光客が訪れます。
夜間の低温で霧が発生する→風で霧が晴れる→昼間の日光が湿った茶葉を乾かす→日没により気温が下がる
この繰り返しが独特の味と香りをつくり出します。
ダージリンの生産期は3~11月までで、一年中収穫できる気候ではありません。
茶樹が一定期間休むことで「おいしさ」が蓄えられます。
これらの「おいしさ」と独特の気候が、ダージリンだけが持つ上品で芳醇な香りと豊かな風味を作り出しています。
ダージリンは水色は薄いながらも特有のフルーティーな香りから、「紅茶のシャンパン」とも呼ばれています。
爽快感のある引き締まった渋み、深いコクのある味わいが特徴です。
ダージリンの茶葉について
ダージリンの茶樹の品種
ダージリンに植えられている茶樹の品種は中国種とアッサム種とクローナル種の3種類があります。
クローナル種とは、もとある茶樹に別のダージリンの優良品種の枝を挿し木して繁殖させたものです。
中国種とアッサム種をかけあわせることもでき、これはハイブリットクローナルと呼ばれることが多いです。
ダージリンでは中国種やクローナル種と比べて味や香りが劣り販売価格が安くなり収益的に不利な純粋なアッサム種の樹木はあまり作られないそうです。
ダージリンのグレード・製造方法
ダージリンの茶葉はその独特の香りを活かすためにグレードは大半がOPタイプです。
短時間の抽出を目的としたBOP
フラワリーな香りを持つチップを多く含んだFOP
なども、シーンに応じて使用されます。
茶葉のグレードについて知りたい場合は「紅茶の等級(グレード)とは」をご覧ください。
近年はCTC製法で生産量を増加させることを優先させる産地が多い中、ダージリンはほぼ全てをオーソドックス製法で製造してます。
オーソドックス製法について知りたい場合は「紅茶の製造方法」をご覧ください。
また、OPタイプがメインのダージリンはローターバンを使いません。
そのため揉捻機の圧力や回数、時間を細かく調整して茶葉の仕上げ具合を調整します。
機械を活用していても全自動化はされていないため、職人の熟練の技が品質を左右します。
ダージリンのブランド性
インドは紅茶の生産量が世界で第1位の国です。
でもダージリンの生産量はインド全体の紅茶生産量のうちの1%とごくわずかです。
具体的には近年世界中で作られている紅茶全体の年間生産量は約400万トンある中、ダージリンの年間生産量はたったの約1トンです。
これだけでもダージリンはとても希少な紅茶であることが分かります。
そんなダージリンのブランド性を守るためにロゴマークがあります。
インド紅茶局が認定したダージリンのみロゴマークが使用が許されます。
ダージリン購入の目安としてみてください。
ダージリンの風味・クオリティーシーズン
ダージリンの生産期は3~11月までですが、その中でも主な収穫時期は年に3回あります。
春らしい爽やかな風味の「ファーストフラッシュ」
マスカットフレーバーが強く感じられる、贅沢で気品ある味わいの「セカンドフラッシュ」
引き締まった印象のミルクにも負けない豊かな風味をまとう「オータムナル」
そのシーズンによって茶葉の色や紅茶の色、風味の変化が非常に豊かです。
それぞれの特徴を楽しめるのもダージリンの魅力のひとつです。
世界の名産地の中で、唯一ブランド化が成功した銘柄ともいえます。
それぞれの収穫時期と茶葉の特徴について紹介します。
ファーストフラッシュ
収穫時期 | 3〜4月 |
茶葉 | 柔らかい新芽 茶色がかった緑色の茶葉 |
水色 | 明るい黄金色 淡いオレンジ色 |
風味 | 爽やかで若々しい風味 ほどよい渋み 力のある香味 高級煎茶のようなほのかな渋み |
ファーストフラッシュはいわゆる一番茶で、ゴールデンチップを多く含む希少性の高い茶葉です。
うまみ成分のアミノ酸が多いので甘みを感じます。
この時期の収穫量は少なく高値で取引されます。
3~4月にダージリン地方では軽い雨期を迎えます。
茶樹が一斉に浅緑色の柔らかい新芽で覆われます。
茶葉本来の香りが楽しめるので、ストレートで飲むのがおすすめです。
シーズン初期の春らしい爽やかな風味は、シーズンが進むにつれて円熟した味わいへと変化していきます。
ダージリンファーストフラッシュは味も香りの良さはもちろん、その年の一番最初に採れるダージリンなので人気が高いです。
そのファーストフラッシュの中でも、一番最初に摘まれる茶葉は特に人気が高いです。
日本でも新茶や1番茶は人気ですが、それと同じです。
ダージリンは収穫順にロット番号が付けられ、一番最初に収穫された茶葉にはDJ-1というロット番号が付けられます。
このDJ-1はとても人気でプレミアム価格がついており、高価の商品がほとんどです。
ただし、DJ-1が最高に美味しいファーストフラッシュだと言うことではありません。
茶園によってはファーストフラッシュの後半のが美味しい場合も、またその逆もあります。
でも、その年に一番最初に採れたダージリンを飲みたい!と思う人が多いので、DJ-1はほかのロット番号よりも高価になることが多いのです。
セカンドフラッシュ
収穫時期 | 6〜7月 |
茶葉 | しっかりとした葉、褐色の茶葉 |
水色 | 薄いオレンジ色・琥珀色 |
風味 | マスカット・フレーバー、味・コク・香りのバランスが良い |
セカンドフラッシュは夏摘みの茶葉です。
5~6月に収穫される葉はファーストフラッシュと比べると多少しっかりしてきて、加工されると外観も茶褐色となります。
味・コク・香りともに一年中で最も優れているとされ、最高級品の名に恥じない品です。
インドで唯一、栽培に成功した中国種の茶葉であることも、ダージリンの大きな特徴です。
風味はマスカットフレーバーと呼ばれるマスカットを口に含んだような爽やかな香りを楽しめます。
セカンドフラッシュもファーストフラッシュ同様ストレートティーでダージリン特有の香りを楽しむのがおすすめです。
オータムナル
収穫時期 | 10〜11月 |
茶葉 | 厚みのある葉 |
水色 | やや赤みがかった深いオレンジ色 |
風味 | 強い渋み、深い甘み、深いコク |
オータムナルは秋摘みの茶葉です。
10~11月、雨期の後の乾燥期には茶葉も厚くしっかりとします。
ファーストフラッシュやセカンドフラッシュよりも味に渋みが感じられます。
そのため、オータムナルに限ってはミルクティーで飲むのもおすすめです。
ダージリンオータムナルは鮮度をとても大切な紅茶です。
キームンは寝かせたほうが美味しくなると言われる紅茶ですがダージリンはそうではありません。
特にダージリンオータムナルは香りが劣化するのが早いです。
セカンドフラッシュは購入後1年以上経過してから開封しても香りを楽しめるものも多いですが、オータムナルは1年経つと開封していなくても、香りが薄くなっていることが多いです。
なので開封状態に関わらずオータムナルは購入したら早めに飲んでしまうことをおすすめします。
ダージリンのオータムナルは食事にもよく合う紅茶なので、食事と一緒に楽しむことで早めに消費できます。
ダージリンのおすすめの飲み方
ストレートティー
ダージリンはその特有のマスカットフレーバーを堪能するためにも、ストレートがおすすめです。
ストレートティーの淹れ方は「ストレートティーの美味しい淹れ方」をご覧ください。
特にファーストフラッシュは爽やかで若々しい風味とほどよい渋みを感じることができます。
アイスティー
紅茶はホットのほうが香りがよく立つのでホットをお勧めしますが、暑い時期には冷たい飲み物の方が飲みやすいかと思われます。
そんな時にお勧めなのがダージリンのセカンドフラッシュのアイスティーです。
ダージリンセカンドフラッシュくらい芳醇な香りがあるとアイスティーでも美味しくいただけます。
アイスティーの淹れ方は「アイスティーの美味しい淹れ方」
もしくは「短時間で作るアイスティーの美味しい淹れ方」をご覧ください。
水出し
希少性の高いファーストフラッシュの水出しは、とても贅沢な飲み方です。
しかし爽やかな渋みと若葉ならではの甘みを堪能できます。
氷出しもダージリンの爽やかな風味が引き立つのでおすすめです。
また、ダージリンセカンドフラッシュを水出しにすると、渋みが抑えられる分、甘みをより感じることが出来ます。
ダージリンセカンドフラッシュなら水出しにしても、十分に香りを楽しむことができます。
紅茶の渋みがニガテな方は水出しのダージリンセカンドフラッシュをおすすめします。
水出しアイスティーの淹れ方は「水出しアイスティーの淹れ方」をご覧ください。
ミルクティー
イギリスではダージリンのオータムナルをミルクティーにして飲むのが主流です。
秋摘みのダージリンは味が濃く渋みが強いので、ミルクとの相性も良いです。
しかし、やはりダージリンなのでミルクを入れると紅茶の香りや味が負けてしまう場合があります。
抽出時間を長く取ったり、茶葉の量を増やすことで、紅茶自体を濃くすることをおすすめします。
ミルクと合わせても紅茶のコクをしっかり感じられるミルクティーになります。
ミルクティーの淹れ方は「ミルクティー[ティーウィズミルク]の淹れ方」
もしくは「茶葉2倍ミルクティーの美味しい淹れ方」をご覧ください。
レモンティー(あまりおすすめしない)
ダージリンティーにレモンはあまりおすすめしません。
せっかくの「マスカットフレーバー」が感じられなくなる上、レモンの酸で渋みが強くなり口に残りやすくなってしまうからです。
どうしてもダージリンをレモンティーとして楽しみたい場合はホットティーよりもアイスティーにすると良いかと思われます。
ダージリンと相性の良いお菓子
爽やかさが特徴のダージリンには、その香りを邪魔しない食べ物がよく合うとされています。
和三盆
きんつば
オレンジピール菓子
バウムクーヘン
フルーツ
ダージリンと他の紅茶の違い
ダージリン以外のインド紅茶
世界最大の生産量を誇るインド紅茶には、「アッサム」の他に「ダージリン」「ニルギリ」「ドアーズ」といった産地があります。
しかし国内での消費量が8割と大多数を占めるため、あまり輸出されていません。
そのため海外に出回るのは主に高級品のみとなります。
産地名である「ダージリン」や「アッサム」がブランド化されているのはこのような事情があるからなのです。
アールグレイとダージリンの違い
よく同列に扱われるアールグレイとダージリンですが、実は全く異なります。
ダージリン=茶葉の名前
アールグレイ=茶葉にベルガモット(柑橘類)の香りが付けられたフレーバーティー
なので、ダージリンのアールグレイもありますし、ダージリン以外のアールグレイもあります。
アールグレイは茶葉によって様々な味わいを楽しむことができます。
アッサムとダージリンの違い
アッサムとダージリンはどちらもインドで生産される茶葉です。
しかし、茶樹の品種が異なり、製法・味・風味も大きく異なります。
銘柄 | ダージリン | アッサム |
茶葉 | 中国種 | 自生アッサム種 |
メイン製法 | オーソドックス製法 | CTC製法 |
おすすめの飲み方 | ストレートティー向き | ミルクティー向き |
ダージリンはどこで購入できる?
ダージリンは様々な紅茶専門店で取り扱いがされています。
各店舗の主力商品となっている場合が多いので、その店おすすめのダージリンを飲み比べしてみても良いかもしれません。
オンライン購入の場合はシルバーポットが便利です。
こちらもおすすめです。
インド紅茶・ダージリンとは?まとめ
こちらの記事では、紅茶の銘柄として最もよく知られるダージリンについて紹介しました。
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