「紅茶」と一括りに言っても、用途に合わせてそれぞれ異なった製造方法があります。
こちらの記事では「紅茶の製造方法」について説明していきます。
紅茶用の茶葉は人の手で摘み取られる
全ての紅茶用の茶葉に最初に行われるのが「摘採」と呼ばれる茶摘みの工程です。
紅茶用の茶葉は、先端の新芽と1枚目、2枚目の葉までのおいしさの詰まった若い部分を摘み取る一芯二葉が基本です。
3枚目以下の葉は大きくて量が取れ、色も濃く出ますが、上質な茶葉にするには育ちすぎています。
3枚目までを摘み取る一芯三葉の方法が採用される場合もありますが、この場合の茶葉は量産品用に使用されます。
一芯二葉だけを機械で摘み取るのは現状では不可能なので、摘採の工程は人の手で行われます。
摘採を行う人の熟練度によって茶葉の品質に差が生まれてきます。
その品質の差が、最終的には紅茶の品質に影響してきます。
紅茶の2大製造方法
摘採された茶葉は、その後工場に運ばれて紅茶として製茶される。
紅茶の製造工程の最大の特徴は「発酵」の工程があることです。
紅茶の製茶には大きく分けて「オーソドックス製法」と「CTC製法」の2種類があります。
オーソドックス製法
オーソドックスという名前の通り、伝統的な製法です。
機械化が進む近年でも各工程で人の手が入り、茶葉本来の個性を生かした紅茶になります。
茶葉が小さく萎れたような外観が特徴的な茶葉です。
萎凋(Withering)
摘採された生葉は総重量の77%という多くの水分を含むので、その水分を取り除き、しおれさせる工程です。
次の揉捻の工程で揉みやすくするために40〜50%ほど乾かしてしおれさせておきます。
萎凋方法には2種類あります。
・自然萎凋…摘採した茶葉を萎凋棚に広げて15〜20時間日陰干しにする
・人工萎凋…萎凋槽で8〜10時間大量の温風を送る
葉がしおれた状態で握りしめた時に、茶葉に指の後が残るようになったら萎凋完了です。
この段階で軽く発酵されていて、リンゴのような甘い香りが葉から漂ってきます。
揉捻(Rolling)
茶葉の細胞を破壊し、葉内の酸化酵素を含んだ成分を外に絞り出します。
しおれさせた茶葉を揉捻機に入れ、掌を擦り合わせるように圧迫しながら葉を揉み、葉汁を出します。
この葉汁が空気に触れることでによって酸化発酵が始まります。
揉切/ローターバン(Rotorvan Manufacturing)
ブロークン・オレンジ・ペコ(BOP)を製造する時に行われる工程です。
オレンジ・ペコ(OP)の場合はこの工程は省略します。
揉捻後の茶葉から更に葉汁を出し発酵を進めるために、「肉ひき機」の原理を利用した機械にかけて、茶葉を細かくねじ切ります。
ローターバンの工程を入れた製法をセミオーソドックス製法とも呼び、インド・スリランカなどで採用されることの多い工程です。
萎凋から乾燥まで2〜3台の少ない機械で行うため、オーソドックス製法と比べ短時間で製造できます。
玉解き/ふるい分け(Roll-breaking/Green-sifting)
揉捻の工程を終えた茶葉は、ぼってりとした塊の状態になります。
それをほぐして茶葉全体を空気に触れさせることで、発酵を促進・均質化します。
自動玉解機という粗いメッシュを上下左右に動かす機械が使用され、十分に揉捻された小さい茶葉のみがふるい落とされます。
大きすぎてふるいに残ってしまった茶葉は必要に応じて再度揉捻機にかけられます。
発酵(Fermentation)
温度25〜26度・湿度90%に整えた専用の台や棚などに茶葉を4〜5cm程度に広げ2〜3時間放置し、空気に触れさせて発酵させます。
電熱線を敷いた台の上で、人工的に熱を加えて発酵させる方法もあります。
発酵させすぎると紅茶の魅力である豊かな香りが損なわれてしまうため、技量が問われる工程です。
この段階で緑色の茶葉が鮮やかな赤褐色になります。
この工程の茶葉に触れるとじんわりと温かく、茶葉が発酵していることがよく分かります。
乾燥(Firing)
発酵の工程まで経た茶葉の水分は生葉の時点と比べて約60%程度まで減少しています。
このまま放置するとさらに発酵が進んでしまうため、発酵を終えさせるために乾燥機に入れて100度前後の熱風で乾燥させます。
目安としては水分を3〜4%程度まで落とします。
茶葉の発酵は加熱することで止められるため、乾燥を終えた茶葉がこれ以上発酵することはありません。
これで荒茶(収穫後、製茶まで終えた茶葉)の完成です。
乾燥は品質の安定や保存のために必要な工程なのです。
区分け/ソーティング(Grading)
乾燥を終えた茶葉はしばらく広げて放置して温度を下げます。
その後茎や軸などを取り除き、メッシュのサイズに分けてサイズや形状を整えます。
完成(Finish)
同じサイズ・形状ごとにふるい分けられた茶葉がそれぞれの箱に詰められて完成です。
オーソドックス製法の場合、萎凋から完成まで約13時間程、揉捻開始から乾燥まで約2時間半程で完了します。
セミオーソドックス製法では揉捻開始から乾燥まで約1時間半程度に短縮されます。
CTC製法
近年大量生産用に考案された製法がCTC製法と呼ばれ、
Crush(押しつぶす)
Tear(引きちぎる)
Curl(丸める)
の3つの工程の頭文字をとって名づけられた製法です。
この3工程をCTC機と呼ばれる一つの機械で自動的に行うことで、作業を効率的にしました。
ティーバッグに使用されることが多く、現在では紅茶生産量の約半分にCTC製法が採用されています。
萎凋(Withering)
CTC製法もオーソドックス製法と同様にまず茶葉を乾燥させます。
こちらは生葉の水分の30〜40%程度飛ばしてしおれさせておきます。
揉切/ローターバン(Rotorvan Manufacturing)
萎凋を終えた後、ローターバンに茶葉を入れてやや細かくねじ切ります。
CTC機(Crush-Tear-Curl)
表面に細かい突起物や刃がついた2本のステンレス製ローラーの回転により茶葉を押しつぶし、引きちぎり、1〜2mm程の粒状に丸めます。
ここで茎や軸も粒状にされるため、オーソドックス製法のようなふるい分けの工程は必要ありません。
CTC機の設定により、粒の大きさに多少の違いが出ますが、その理由は渋みを調整するためです。
タンニンの多い茶葉は大きめの粒でマイルドに、タンニンの少ない茶葉は小さい粒にして凝縮させることで、最終的に均一性のとれた茶葉に仕上げられます。
その後の発酵や乾燥まで行える機種も開発されています。
発酵(Fermentation)
丸い粒状になった茶葉を専用の部屋で広げて発酵させます。
発酵の工程自体はCTC製法もオーソドックス製法も同じです。
乾燥(Firing)
十分に発酵させたら発酵を止めるために乾燥させます。
こちらもオーソドックス製法と同じく茶葉を乾燥機に入れ、熱風を当てて水分を減らしていきます。
おわりに
この記事では紅茶の製造方法について紹介しました。
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