一般的にクセがなく飲みやすいと思われているセイロン紅茶の中で、個性豊かなルフナ。
知名度があまり高くはないけれど、独特な味わいと香りが格別と紅茶好きの中で人気の高い紅茶です。
こちらの記事ではそんなルフナについて紹介します。
ルフナの産地
スリランカには世界的に有名な『セイロン・セブン・カインズ(Ceylon Seven Kinds)』と呼ばれるセイロンの7大紅茶の産地があり、ルフナはそのうちの1つです。
スリランカでは紅茶の生産地名を名称に使うことが多いですが、ルフナは現在使われている地名ではありません。
紀元前のスリランカは3つの国に分かれていて、その一つがルフナ王国でした。
ルフナは地名としては残らなかったけど、紅茶の名前として残ったのです。
ルフナとは現地の言葉で南を表しており、現在のルフナの農園もスリランカの中央山脈の南に位置しています。
セイロン紅茶の産地の中でも一番南部にあり、暖かい気候になっています。
そして、ルフナ王国があったエリアは現在サバラガムワ地方と呼ばれています。
そのサバラガムワ地方で現在栽培されている紅茶がサバラガムワです。
サバラガムワはもともとルフナに含まれていましたが、標高や気候の違いによってルフナとは異なる産地の茶葉として新たに加えられました。
元々合わせられていたルフナを北部と南部に分けて、北をサバラガムワ・南をルフナと分類されています。
これによりウバ・ディンブラ・ヌワラエリア・キャンディ・ルフナの5つがセイロン5大紅茶として分類されていたのが、サバラガムワ・ウダプセラワの2つが追加されてセイロン7大紅茶として分類されるようになりました。
セイロン紅茶といえばウバやディンブラが有名ですが、実はスリランカの紅茶生産量の約60%をルフナが占めています。
ルフナは標高約200~400mほどのローグロウン(低地産)で、セイロンティーの生産地の中でも最も低い地域です。
スリランカは元々コーヒーの栽培が盛んでしたが、19世紀後半よりサビ病と呼ばれる寄生菌により茶葉が枯死する病気が起こります。
これをきっかけに紅茶栽培が始まり、今では世界最大級の紅茶輸出国へと成長を遂げました。
ルフナの低い標高、高い気温、そして豊かな太陽の日差しを浴びて育てられる紅茶は、その土壌条件から、しっかりとした濃い赤茶色の水色と濃厚な味わいが生まれています。
ルフナの茶葉について
ルフナのグレード・製造方法
ルフナの茶葉はオーソドックス製法によるBOPサイズが主流です。
一般的なBOPタイプの茶葉は2〜3mmですが、ルフナの茶葉は3〜4mmと大きめです。
これには2つ理由があり、1つ目がルフナの栽培環境です。
スリランカでは、低い産地でアッサム種、高地では中国種が栽培されるため、ルフナでは葉の大きいアッサム種が植えられています。
この大きめの茶葉が標高が低く気温の高いルフナでさらに茶葉の成長が促進され、茶葉も大きく育ちます。
2つ目が渋味の調整です。
茶葉が小さいと、紅茶を淹れた際に渋み成分であるタンニンが多く抽出されます。
そのため、大きめの茶葉にすることで渋味を抑え、甘みや濃厚な味わいを引き出しています。
ルフナの製造方法の最大の特色は、発酵時間の長さです。
南部の気温の高い土地柄、茶葉の発酵が進みやすい環境ですが、さらに発酵させる時間を90〜120分と長く設定しています。
これはヌワラエリアの発酵時間10分と比較すると非常に長い発酵時間であることが伺えます。
ルフナはCTC製法にするとコクや深みが増しますが、同じアッサム種のインドのアッサムよりもすっきりとした軽めの味わいが特徴です。
茶葉のグレードについて知りたい場合は「紅茶の等級(グレード)とは」をご覧ください。
オーソドックス製法・CTC製法について知りたい場合は「紅茶の製造方法」をご覧ください。
ルフナの風味
一般的にクセがなく飲みやすいと思われているセイロン紅茶の中で、ルフナは個性豊かな茶葉です。
最大の特徴は燻製したようなスモーキーな香りです。
高品質のルフナは黒蜜のような甘い香りがすることもあります。
スモーキーな香りと言えば中国紅茶のキーマンですが、それよりも野性的で大地の香りを感じる
ルフナは強く発酵させ強乾燥することにより、真っ黒な黒褐色の茶葉になるため、ブラックリーフと呼ばれています。
ルフナの水色は深みのある黒っぽい赤茶色。
色が濃いのは発酵が強い証拠で、この発酵の良さから深いコクが生まれます。
ですが、水色の色の濃さの割には渋みが少なく、マイルドな紅茶です。
しっかりとしたコク、黒糖のような甘味、ほどよい渋みと個性豊かでありながらも、セイロンティーならではの透明感とコク、すっきりとした後味の飲みやすい紅茶です。
ルフナはセイロン紅茶の生産量の約60%を占めていおり、生産性が高く通年製茶されているので、一般的には比較的リーズナブルな価格で販売されています。
ですが、高品質のルフナの作り方は極上のきめ細やかさで、市場においてかなりの高値で取引されます。
中東や中国ではとても人気が高く、オークションで高値で取引されることが多いのもルフナです。
ルフナのクオリティシーズン
ルフナは特にクオリティシーズンは無く、一年を通して収穫・製茶されています。
約20日間の周期で年に14〜15回程の収穫が行われます。
収穫を終え剪定した後は、その茶葉を1年間休ませて次の収穫時期に備えます。
クオリティシーズンの無いルフナですが、2~4月が比較的良質な茶葉の生産量が収穫されるといわれています。
ルフナのおすすめの飲み方
ストレートティー
ルフナはしっかりしたコクと深みがありますが、渋みが少ないためストレートでも飲みやすい紅茶です。
紅茶は女性文化とも言われていますが、すっきりした味わいとスモーキーな香りから男性にも好まれやすい紅茶です。
ストレートティーの淹れ方は「ストレートティーの美味しい淹れ方」をご覧ください。
アイスティー
ルフナで作るアイスティーは、さっぱりした口当たりが楽しめます。
渋み成分であるタンニンも比較的少ないのでクリームダウンが起こりにくいため、クリアなアイスティーを作ることができます。
アールグレイなどのフレーバーティーが苦手な方は、ルフナで淹れるアイスティーがおすすめです。
ミルクティー
ルフナはミルクとの相性が良い紅茶なので、ミルクティーもおすすめです。
他のミルクティーには無い、黒糖のような独特の香りとクリアな後味を楽しむことができます。
濃いめに抽出し、たっぷりのミルクを合わせるのがポイントです。
ミルクを入れることでマイルドになりつつも、ルフナ本来のしっかりした味わいと香りを感じることができます。
水色の色も濃く、ミルクを入れると美味しそうな色に映えます。
チャイ
ルフナの飲み方で特におすすめなのがチャイです。
ちょっとクセのあるスモーキーな香りは、スパイスとも相性が良いです。
中近東や北アフリカではチャイを作る時にルフナが好まれることが多いそうです。
たっぷりのミルクとスパイスで煮込んだチャイは、濃厚な美味しさを味わうことができます。
ルフナのおすすめの組み合わせ
スモーキーなルフナは、ワインのおつまみになりそうなものとよく合います。
・チーズケーキ
甘くスモーキーな香りのルフナは、チーズとの相性がとても良いです。
特に濃厚なチーズケーキにはぴったりの組み合わせです。
チーズのこってりした味わいを、ルフナがすっきりとさせてくれます。
・ドライフルーツやナッツ
水分を蒸発させることで、フルーツ本来の味や香りも濃縮されたドライフルーツやナッツには、ルフナの柔らかくも深みのあるコクが良く合います。
・スパイスケーキ
濃い味のケーキにも負けないしっかりしたコクがあるので、ドライフルーツやスパイス、ブランデーなどをたっぷり染み込ませた濃厚な味わいのスパイスケーキにも、ルフナは良く合います。
・サンドイッチやキッシュ
すっきりとした口当たりのルフナは、食事時にもおすすめです。
アフタヌーンティーのサンドイッチやキッシュでも、パイなどのこってりしたものでも、ルフナはよく合います。
ルフナと他の紅茶の違い
ルフナ以外のスリランカ紅茶
スリランカには世界有数の紅茶産地がありますが、その中で世界的に有名な『セイロン・セブン・カインズ(Ceylon Seven Kinds)』と呼ばれるセイロンの7大紅茶をご紹介します。
ウバ | メントール系の爽やかな香り、 輝く水色 良質なものは非常に希少 |
ディンブラ | 柑橘系の香りとキレの良い渋み セイロンティーの内、日本では輸入量が一番多い 旬のディンブラは香り・ボディー・渋みのバランスが良く別格。 |
ヌワラエリア | 発酵が浅い仕上げで、緑茶のような独特の渋みと高貴な香りと甘み 別名「セイロンティーのシャンパン」 茶園が少なく希少 |
キャンディ | セイロン紅茶発祥の地として有名 コクと渋みが良くも悪くも控えめで飲みやすい |
ルフナ | 濃い赤茶色の水色と濃厚な味わい 澄んだモルティー香 ミルクティーに良く合い、インドのアッサムよりも後味が軽く爽やか |
サバラガムワ | もともとはルフナにカテゴライズされていた地域 以前のセイロンティーは5カインズだったが近年7カインズになったことで追加 |
ウダプッセラワ | ウバに近い地域 口当たりと喉ごしの良さ、ほのかに香るメントール香 ザバラガムワと同じく新しく追加された地域 |
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