窓を開けると、やわらかな春の空気の中に、少しだけ初夏の気配が混ざるようになってきました。
朝に淹れる紅茶も、夜に手に取るブランケットも、少しずつ季節に合わせて変わっていく頃。
5月は、そんな移り変わりを感じながら、静かに針を動かしていた1か月でした。
前半は、春の花を閉じ込めるように刺していた鬱金香のリース。
後半は、子どもの「好き」を形にしたくて作り始めた恐竜ストラップ。
同じ刺繍でも、向き合い方が少しずつ変わっていった気がしています。
完成した作品だけではなく、糸を選んだ時間や、少しだけ針を持った夜のことも含めて、5月の刺繍時間として残しておこうと思います。
春の空気を閉じ込めるように刺した、鬱金香のリース

5月の前半は、チューリップのリースを少しずつ刺していました。
春らしい花を眺めたくて選んだ図案でしたが、刺し進めていくうちに、「春を部屋に残しておきたい」という気持ちが強くなっていった気がします。
今回は、見本とは違うやわらかな黄色の布を選びました。
春の日差しのような色にしたくて、完成した時に部屋の空気まで少し軽くなるようなイメージで。
実際に刺してみると、布の色が変わるだけで、糸の印象もかなり変わって見えます。
特にミモザの部分は、最初に選んだ色だと少し強く感じてしまって。
何度か糸をほどきながら、最終的には2色を引き揃えて刺すことにしました。
少し遠回りをしながら整えていく時間は、なんとなく今の暮らしにも似ている気がします。
急いで完成させるより、違和感を見つけた時に立ち止まってみること。
そんな感覚を、刺繍を通して教えてもらっているようでした。
春の空気を少しでも長く残しておきたくて、糸の色や花の形を何度も見直しながら進めていたリース。
完成までの試行錯誤や、春色の布を選んだ理由については、こちらに詳しく残しています。
誰かの「好き」を形にした、恐竜ストラップ

後半に作っていたのは、通園バッグにつけるための恐竜ストラップでした。
今までの刺繍は、自分のための時間として楽しんでいたものが多かったのですが、今回は少し違います。
「これ、喜んでくれるかな」
そんなことを考えながら針を動かしていました。
子どもの好きな恐竜をモチーフにしたくて、今回はオリジナル図案にも挑戦しています。
図鑑を見ながら形を描いてみたり、配色を一緒に考えてみたり。
自分ひとりで整えていく時間とはまた違う、にぎやかな刺繍時間でした。
特に印象に残っているのは、色選びです。
私は少しくすみのあるやわらかな色が好きなのですが、子どもの中のティラノサウルスは「オレンジ色!」だったみたいで。
その間を探すように、サーモンピンクや赤みのあるオレンジを並べながら、少しずつ色を決めていきました。
誰かの好きなものを形にする時間には、自分だけでは出会えない色があるのかもしれません。
子どもの「好き」をきっかけに始まった、小さな恐竜刺繍。
図案を描き、色を迷い、仕立てを考えながら少しずつ完成していった制作記録は、こちらにまとめています。
少しずつ広がってきた、刺繍の楽しみ方
5月の刺繍時間の中で、一番大きかった変化は、「自分で考えて作ってみる時間」が増えたことでした。
今までは、作家さんの図案を受け取りながら、その世界観を楽しむ刺繍が中心でした。
もちろん、その時間もとても好きです。
色の重なりや、繊細な形をひと針ずつ追いかけていくと、自分では思いつかない表現に出会えることがあります。
でも今月は、恐竜の図案を自分で描いてみたり、どんな形なら使いやすいかを考えたりしながら、
「自分の中にある好きな形」を探す時間が少しずつ増えていきました。
飾るための刺繍。
暮らしの中で使う刺繍。
誰かのために作る刺繍。
その時の気持ちを残しておくような刺繍。
同じ“刺繍”でも、少しずつ意味が広がってきている気がします。
完成した作品だけではなく、
「どうしてこの色を選んだんだろう」
「どんな形が好きなんだろう」
と考えている時間そのものが、今の自分にとって大切なものになってきました。
少しずつ見つけていく、私の“好き”
5月の刺繍時間を振り返ってみると、今月は、「私の好き」を探していた時間だった気がします。
やわらかな春色の布。
少し落ち着いたチューリップの色。
何度も刺し直して整えたミモザの形。
子どもと一緒に考えた恐竜のイラスト。
迷いながら選んだ、少しくすみのあるオレンジ色。
どれも小さなことですが、そんな“好き”の欠片が、今の暮らしを少しずつ整えてくれていたのかもしれません。
完成した作品だけではなく、
「どんな色が好きなんだろう」
「どんな空気感に心がゆるむんだろう」
そんなことを考えていた時間そのものが、今月の刺繍時間として残っている気がします。
季節は少しずつ春から初夏へ移り変わっていきますが、またその時々の空気を閉じ込めるように、これからも自分の“好き”を探しながら、静かに針を動かしていけたらと思っています。
この春の刺繍時間とあわせて
刺繍を無理なく続けたいときに

刺繍時間をもう少し心地よく整えたいときに
▶︎ 季節のティータイムの整え方
小さなモチーフを暮らしの中で楽しみたいときに
▶︎ 暮らしの中で使う、小さなワンポイント刺繍の楽しみ方
少しずつ手を動かしながら整えていく時間が、また明日へ向かう余白になりますように。


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